北里大学医療衛生学部人工皮膚研究開発センターの紹介
北里大学医療衛生学部人工皮膚研究開発センター教授
北里大学大学院医療系研究科再生組織工学教授

黒柳 能光
No.3

4.厚生労働科学再生医療ミレニアムプロジェクト:同種培養真皮の多施設臨床研究
 北里大学医療衛生学部人工皮膚研究開発センターで製造した同種培養真皮を使用して全国26の医療施設において多施設臨床研究が推進されている(図1)。同種培養真皮の性能は、マトリックスを構成する材料自身による創傷治癒促進効果と線維芽細胞から産生される種々の生理活性物質による創傷治癒促進効果との相乗作用に依存する。そこで、ヒアルロン酸とアテロコラーゲンの2層構造のスポンジをマトリックスとした新規の同種培養真皮を開発した(図24,5)。ヒアルロン酸は細胞の移動を促進し、コラーゲンおよびその分解生成物であるペプチドは線維芽細胞に対して走化性因子として作用する。線維芽細胞は、創傷治癒に重要な作用をもつVEGF、bFGF、KGF、PDGF、HGF、IL-6、IL-8、TGF-βを産生する。この他に、創傷治癒に重要な作用をもつフィブロネクチンも産生する。


図1 厚生労働科学再生医療ミレニアムプロジェクト:同種培養真皮の多施設臨床研究ネットワーク


図2 ヒアルロン酸とコラーゲンの2層構造のスポンジに線維芽細胞を播種して作成する同種培養真皮の構造と機能

 当センターでは、10cm×10cmサイズの同種培養真皮を年間2000枚製造することができる。ウイルス(HIV、HBV、HCV、HTLV)に感染していないことを確認した患者から提供された皮膚小片を入手し、抗生物質/抗真菌剤で処理した後、コラゲナーゼ処理により線維芽細胞を採取し、これを継代培養してマスターセルとワーキングセルとして凍結保存する。安全性を確保するため、マスターセルの一部を使用して、再度、ウイルス(HIB、HBV、HCV、HTLV、Parvovirus)に感染していないことを確認する安全策をとっている。同種培養真皮のマトリックスは、ヒアルロン酸とアテロコラーゲンを原料として凍結真空乾燥法により作製する。ワーキングセルを解凍して継代培養した線維芽細胞をマトリックスに播種して培養する方法で同種培養真皮を製造する(図3)。

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図3 同種培養真皮の製造:マトリックス上に線維芽細胞の浮遊液を滴下 [1]、翌日培養液を加えて1週間培養[2]

 同種培養真皮の凍結保存は、培養液を凍結保存液に交換した後、毎分−1℃の速度で4℃から−60℃まで冷却して凍結させ、さらに−152℃の超低温フリーザー内で保存する。同種培養真皮の他施設への供給は、ドライアイスを入れた発泡スチロールの箱に納めて冷凍便で搬送する方法をとっている。同種培養真皮を他施設に搬送する前に、マイコプラズマ検査および生菌数検査を行い陰性であることを確認するシステムを確立している。同種培養真皮を受け取った施設は、−85℃あるいは−152℃のフリーザー内で保存している。臨床使用する際には、37℃で急速解凍した後、乳酸リンゲル液でリンスして凍結保存液を除去してから使用する。

 第1期厚生労働科学再生医療ミレニアムプロジェクトとして、平成12〜14年度に全国の医療施設において同種培養真皮を用いて263症例の臨床研究を展開した。症例の内訳は、深達性 II 度熱傷:37症例、III 度熱傷壊死組織切除創:17症例、高倍率自家メッシュグラフトの保護:30症例、分層自家パッチグラフトの保護:6症例、難治性皮膚潰瘍:108症例、外傷性皮膚欠損創:13症例、色素性母斑切除創:10症例、熱傷等瘢痕切除創:6症例、悪性腫瘍切除創:25症例、プロトコール外の参考症例:11症例であった。有効性の評価と安全性の評価を総合して4段階の判定を行った。極めて有用:162症例、有用である76症例、普通:13症例、有用でない:1症例であった。新しい治療法となる代表症例を図4図5に示す。

 再生医療の実用化を目指して、平成15年度〜16年度にかけて、第2期プロジェクトが当該研究班により推進され、第1期プロジェクトと合せると350症例に及ぶ臨床研究報告が蓄積されている。

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