第2回 World Union of Wound Healing Societies'
Meetingに参加して
札幌医科大学 皮膚科 小野一郎
No.3

 さて、私自身が本学会で印象深かったsessionは大変に多かったのですが中からいくつかご紹介致します。1つ目は最後の日に米国のMustoe先生が座長となって進められたClinical cases interactive presentationです。このsessionではMustoe先生が用意したいろいろな瘢痕を持つ患者様の治療法を会場の参加者と議論するという物でした。私たち日本人にもなじみの多い、耳介のケロイド、手首の瘢痕、にきびの瘢痕、熱傷瘢痕などの症例について真摯な議論が行われました。このsessionでは私自身も日本で行われている治療に関して発言をしてきましたが、どちらかといいますと有色人種の問題として欧米でとらえられがちであった問題がこのようにして注目され、治療法が議論されているのには大変に感動しました(写真7)。2番目は学会初日に会長のTeot先生と米国のFalanga先生が参加して行われたAlgolism change: When to adopt new technologies? Expert opinion vs randomized control trialです。Falanga先生が基礎研究の成果を臨床に応用するためには多施設のrandomized control trialが重要であるとの意見を述べたのに対して、Teot先生は研究面での成果を臨床に利用するために必要なのは感性と経験豊かなexpertの意見であるとの発表を行いdiscussionが行われました。私は今まではrandomized control trialのみが臨床を変えるのではと考えていましたが、Teot先生の意見にも共感するところもあり大変に考えさせられました。同様のdebateは動物実験が臨床の手法を変えるためにどういう意義をもっているのか否かという点でも行われていました。ここでは次期会長でCanadaの研究面での大御所であるSibbald先生が動物実験の結果をそのまま鵜呑みにして信じては間違いで私は25年間の動物実験から得た事実はほとんど無い(おそらく逆説的に)と発言していたのにはこれもまた考えさせられました。最後に最も印象深かったsessionはアフリカからの臨床家が2人で座長を務めていたKeloids(basic aspects and treatments)です。ここでは有色人種、特に黒人における高度なケロイドの症例が呈示され参加者に衝撃を与えていました。参加者の中にはscar preventionの研究の権威であるFergusonを始めとしたそうそうとした研究者が参加し、固唾をのんでアフリカの臨床家の発表に耳を傾け真摯に議論している姿が大変に印象的でした。私も黄色人種におけるケロイドは見慣れているのですがこの方面における研究の重要性と私たち日本人の果たすべき役割が大変に大きな分野であるとあらためて実感しました。このように世界の最先端の研究者と開発途上国を含めた世界の臨床家やco-medicalのstaffが一堂に介して議論できるという点がWorld Union of Wound Healing Societiesユ Meetingの真の意味での意義ではないかと感じたsessionでした。また、会場の一角では企業展示が大規模に開催されており、新しい治療用の被覆剤、ベッドなどが所狭しと並べられておりました(写真8)。


写真7 Mustoe先生が座長となって進められた Clinical cases interactive presentationの様子。


写真8 企業展示の様子。

 あとは例によってafter fiveのことになりますがParisのことにつきましては会員の皆様も既にご存じのことばかりでしょうから余り書くことはないと思います。ただ、30年以上前のフランス、Parisを知っている者としてはEUに参加してからParisの人々が大変にfriendlyとなり英語がどこでも問題なく通じるようになり、私たち日本人にとっても楽しみやすくなったことです。これはレストランなどで食事するときに大変に重要な点で今回も同行させて頂いた赤坂先生とおいしい食事とwineをほとんど毎晩の様に楽しませて頂きました。また、ご存じのようにParisにはたくさんの美術館がありますが夜は9時頃まで開館している美術館も多く、学会に参加した後に訪れることもできました。私自身は今まで何度か見たいと思ってもなかなか見ることができなかったシャガールの絵が余り期待せずに訪れた近代美術館の一部屋に飾ってあるのを見つけ、大変に感動しました。それだけでも今回Parisに行って良かったと感じてしまいました(写真9)。


写真9 近代美術館で。シャガールの絵の前で。

 このように運営面では参加者の小言が多く聞かれた学会でしたが企画や内容、さらにはpresentation法や運営に当たる人々のhospitalityなどフランスならではの良い点も多く、Parisと言う町の持っている多大な魅力を加味したとき私自身はどうしても甘い点数を付けてしまいます。参加して大変に勉強になり、考えさせられ、そして楽しめた学会でした。4年後のWorld Union of Wound Healing Societiesユ MeetingはProf. Gary Sibbaldの下でCanadaのTorontoで開催されることになりましたので会員の皆様は是非今から準備をして頂きご参加をご考慮ください。そして会員の皆様の力でこの分野での日本創傷治癒学会の貢献もさらに大きな物とできますように努力したい物です。

(使用しました写真の一部は東邦大学の赤坂喜清先生撮影のものです。)