第34回日本創傷治癒学会を終えて
会長 三輪晃一(金沢大学大学院医学系研究科がん局所制御学)

 第34 回の本学会は、2004年11月29・30日の両日、金沢市の石川県文教会館で開催されました。

 一向に回復の兆しがみえない経済不況で研究費抑制が進んでおり、近年の医学研究を取り巻く環境は厳しくなっております。加えて、4月からの国立大学付属病院や国立病院の独立行政法人化、臨床研修医制度の実施は医療現場に人手不足を引き起こしており、会員の学会出席も儘ならなくなっております。そんな中、73題の演題の応募を頂き、多数の参加を賜り、主催したものとしてこれ以上の喜びはありません。

 順調な創傷治癒がメスを入れる前提でありますが、人口の高齢化とともに糖尿病・虚血・ステロイド投与などの創傷治癒遅延因子をもつ患者が増えており、創傷がどのようにして治るかは古くて新しい課題です。研究手法は、従来の病理・生化学から遺伝子やサイトカインレベルの分子生物学へと進化しており、その発展には大きな期待がかけられております。これらのことを考慮して本学会の主題を決めました。

 主題「血管新生療法・消化管の創傷治癒」では、四肢虚血による潰瘍に対し自家骨髄を筋肉内注射の臨床成績、FGF-2の血管新生誘導、実験胃潰瘍での線維芽細胞からのPGESの発現、充填された大網の転帰などが報告されました。

 「特殊病態下の創傷治癒」では、ケロイドへの電子照射療法、吸引療法、糖尿病性足病変に対するチーム医療、炭酸浴の微小循環血流促進効果、ステロイド投与患者の術後腹壁創開などが発表されました。

 「再生医療と創傷治癒(1)」では、bFGFによるアポトージス誘導と瘢痕抑制、骨髄由来間葉系幹細胞の瘢痕形成抑制、自家培養真皮の保存、光硬化性キトサンゲルの皮膚移植への応用、自家脂肪細胞由来幹細胞による培養真皮、ES細胞の自己制御機構などの基礎研究が最新情報として提供されました。

 「再生医療と創傷治癒(2)」では、四肢壊疽症例への自家骨髄細胞移植、ヒト間葉系細胞の再生医学への応用、胎仔創傷治癒発現遺伝子などについて論じられました。

 「褥創治療の最前線」は、ラップ療法、ハイドロコロイドドレッシング材、吸引療法などの成績が発表されました。

 さらに、一般演題43題では、創傷治癒の分子生物学的研究、bFGFの治療成績、臓器特異性、褥創治療など先進的な治療が発表され熱っぽく討論されました。

 創傷治癒の研究は、生体が持つ本来の治癒力を100%引き出すにとどまらず、さらにこれを人為的に増強する時代に入ろうとしています。分子レベルでの創傷治癒過程の解析、幹細胞研究のさらなる発展で臨床に応用される日の近いことを期待したいと思います。

 最後に、この学会で「創傷処置のガイドライン」を作成することが提案されたことを付記しておきたいと思います。現状の創傷処置の方法は、施設あるいは個人により異なっています。科学的に裏づけのある標準手技を学会が提示することは、教育効果だけでなく、医療資源の浪費を省くためにも意義あることであります。


学会終了後、会場にて
 


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