発見への新しい道筋
〜第15回創傷治癒学会(15th Annual Meeting and exhibition of the Wound Healing Society)参加記〜

長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科
発生分化機能再建学講座 形成外科
秋田定伯 

 Wound Healing Societyの年次総会が、2005年5月18日から21日まで、ChicagoのHyatt Regency Hotelで開催されました。今年のテーマは“New pathway to discovery”であり、参加者は最終的に480名を越えたようです。基調講演は、Indiana大学のDavid Stocum教授の“A call to amphibian arms: weapons for mammalian regeneration”の演題で、両生類の四肢の再生の視点から、ほ乳類の再生を検討する内容でした。研究材料が非常に扱いやすく、また、取り扱った分子は、レチノイド、msx、musashi等のパターン遺伝子であり、充分ほ乳類の再生研究への発展につながる基礎的な講演でした。単独のセッションはangiogenesis、stem cellsに関してあり、zebrafishを用いたangiogenesisの検討、Thymosin 4の修復・増殖機転に関して(ちなみにこの演題の発表内容は既にKleinman Hらにより一部Wound Repair and Regeneration誌に掲載されており、最も引用回数の多い基礎的原著論文だそうです。)、マウスモデルでのangiogenesisと、stem cellsでは骨髄由来幹細胞の創傷治癒過程への応用、骨髄由来体性幹細胞の特徴検討と治療応用、表皮角化幹細胞と毛包に関してであり、それぞれの先端的研究内容が詳細に紹介されました。

 例年通り、10演題のYoung Investigator Competitionの発表演題と共に、Concurrent session(並行セッション)として、急性創傷(臨床及び基礎検討)・生体工学・細胞外マトリクス、臨床治験・増殖因子・炎症、創傷ケアの臨床治験・生体工学、慢性創傷・血管新生・遺伝子治療の合計67演題の口演がありました。ポスター演題は110演題の発表がありました。


科研製薬(株)学術 富永一慶氏と筆者。
モニター画面は京都大学形成外科 鈴木茂彦 教授(英語のsubtitle付ヴィデオでした)

 協賛企業は学会演題にも、かなりの部分を占めてきているようで、事実15ブースの常設商業展示と共に、各企業研究者からの発表ポスター演題(Finalistとして15演題)は、上位3演題をBlue Ribbon Poster Awardとして学会期間中表彰しております。本学会は、基礎的な演題から臨床治験まで幅広く取り扱っており、参加者も若手研究者(academic及びindustry)から、販売促進の広告として、あるいは会の設立当初から関わってきた創設者、研究者、医師の連絡の機会として活用されておりました。筆者もポスター発表しましたが、そのポスター会場は、商業展示場でもあり、偶然、日本から科研製薬(株)による塩基性線維芽細胞増殖因子(フィブラスト・スプレー)の商業展示がありました()。おそらく日本の企業としては、15回の学会の歴史上初めての商業展示ではなかったかと思いますが、非常に多くの研究者が感心を寄せており、事実、日本からの発表者が私のみであったことからなのか、直接の理由は不明でしたが、registration deskで、初日に登録している際にもThios Pharmaceuticals社と関係のあった研究者から、「bFGFはどうですか」と直接質問を受けております。日本発の、世界初の臨床使用のbFGFとして、少なくとも研究者レベルでは高い認知度であるようです。また、発表の所々に、現在のNIH(National Institute of Health)を中心とする、研究補助機関の動向や、政府の規制・研究に関する法設定を敏感に反映しながら、活発な検討がされました。本学会の特徴は、フロアから、研究の責任者(corresponding author)同志の意見の交換が盛んであり、各々の研究グループ総出で演題に対して、取り組む姿勢が伺われ、大変有意義な討論ばかりであったと思います。今後は、多くの日本の創傷治癒・再生の研究者へも是非積極的な参加と議論への参加を期待したいものです。来年(2006年)は5月14日から17日まで、ArizonaのScottsdaleで開催されます。

閉じる