第35回日本創傷治癒学会を終えて

会長 熊谷憲夫 
(聖マリアンナ医科大学形成外科学講座)

 第35回日本創傷治癒学会は2005年12月5日(月)・6日(火)の両日、東京千代田区の全共連ビルで開催されました。

 近年、創傷治癒に関する基礎研究が飛躍的に進歩し、臨床面ではサイトカイン治療、多血小板血漿療法、さらにはヒト培養細胞移植といった再生医療による新たな創傷治療が難治性潰瘍の治療に用いられるようになりました。また、最近の高齢化社会にあって、褥瘡や糖尿病性潰瘍といった難治性潰瘍の治療が大きな課題となっています。このような背景から、医師、看護師をはじめとして医療関係者の本学会に対する期待も高まり、今回の学会では70演題、2日間でのべ350人という多数のご参加をいただきました。学会主催者として、本学会の益々の発展を確認しますとともに、皆様のご支援に心より御礼申し上げます。

 本学会の特別プログラムとして、米国から William J. Lindblad 先生、デンマークから Finn Gottrup先生の2名の海外招待講演者をお迎えしました。 Lindblad先生は、学会公式機関誌 Wound Repair and Regeneration のchief editorとして活躍されておられます。今回「Alteration in diabetic fibroblast function: implication for wound healing」というテーマで講演されました。糖尿病患者さんの難治性潰瘍について、皮膚のfibroblastの細胞機能低下という面からのアプローチで発現機序を解明されました。一方、Gottrup先生はEuropean Tissue Repair Society Meetingを主催され、現在、同学会のboard memberとして活躍されておられます。「Modern Wound Healing :Status of Research and Practice and Future Development」と題して、デンマークにおける創傷治療センターでの難治性潰瘍のチーム医療の現況、また医師の教育、基礎研究の大切さ等についてご講演頂きました。

 主題「血管新生と創傷治癒:基礎と臨床」では、消毒薬の創傷治癒への弊害、bFGFの瘢痕拘縮抑制効果の機序、人工真皮への血管進入促進効果の工夫とその臨床応用、難治性潰瘍への自家骨髄移植の臨床成績などが報告されました。

 主題「被覆材の効用」では、光硬化性キトサンの分解に関わる因子、新しい創洗浄システムの導入と湿潤療法による創傷治癒促進効果、創傷被覆材の効果的な利用法、顆粒型ハイドロコロイド製材の特殊部位における使用法などが発表されました。
主題「各種疾患に合併する難治性潰瘍の治療戦略1」では、キトサンパウダーと5ミアミノサリチル酸含有ゾル注入療法の効果、感染創に対する創内持続陰圧洗浄法、Vacuum Assisted Closureの改良法、難治性下肢潰瘍治療時における皮膚潅流測定に基づいた血行再建が報告され、難治性潰瘍治療への新たな治療戦略が報告されました。

 主題「各種疾患に合併する難治性潰瘍の治療戦略2」では、PPARγ遺伝子導入による角膜潰瘍治療の実験的成果、難治性足趾潰瘍の治療戦略、下肢静脈性潰瘍に対する診断・治療のストラテジー、ラップ療法の有用性等について臨床的新知見が発表されました。

 主題「体性幹細胞と組織再生」では、皮膚創傷治癒時における炎症反応遺伝子群の発現様式と遺伝子発現抑制による瘢痕形成の変化、各種動物由来の脂肪組織由来幹細胞の多分化能と移植後の組織再生、Shc familyのShcCと創傷治癒との関係、高線量放射線照射下での間葉系幹細胞の生存とシグナリング、間葉系幹細胞移植後の骨再生過程などに関し最新の基礎研究の成果が報告されました。

 一般演題として43題ご応募頂きました。組織再生、創傷処置、増殖因子・接着因子・サイトカイン、感染及び難治性潰瘍・褥瘡、遺伝子治療、症例報告といった最新のテーマについて大変興味ある知見が報告されました。さらに、今回から若手研究者のmotivationを高めるため優秀な論文に対し研究奨励賞を設けることになり、栄えある第一回目の受賞者として、和歌山県立医科大学の近藤稔和先生が選ばれました。「皮膚損傷におけるIL-1raの病態生理学的役割解析」というご演題で、北島政樹日本創傷治癒学会理事長より賞品が授与されました。今後、多くの若手研究者がこの賞にチャレンジし、本学会をなお一層盛り上げる原動力になって頂きたいと期待しております。

 最後になりましたが、予想を超える参加者があり、学会初日は座席が足りずに大変ご迷惑をおかけいたしました。過密なスケジュールと、このような状況下にもかかわらず、大勢の先生が朝から夕方遅くまでご参加下さり討論に加わって頂きましたことは、主催者としまして大変ありがたく思っております。また、講演、座長をお願いいたしました先生方のご協力とご厚情に深謝申し上げますとともに、本学会の開催にあたりまして多くの学会関係者の方々ならびに関係各位から多大な御尽力を賜りましたことに、あらためて御礼申し上げます。

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