|
|
|
和歌山県立医科大学 法医学教室 |
| 当教室は、文字通りの「法医学」で、病理学でも、皮膚科学、形成外科学、外科学でもなく、日頃は、和歌山県下の犯罪死体や犯罪関与が疑われるご遺体についての解剖を本務としている。したがって、読者の方々におかれては、このような法医学教室が何故、創傷治癒なのかと、単純に疑問を抱かれるだろう。そこで、まずは始めに、法医学と創傷治癒の関わりについて簡単に説明すると、法医解剖においては、様々な損傷が観察されるわけですが、特に治癒傾向にある損傷では、その損傷がどれくらい前から存在していたのか(損傷の受傷後経過時間)が、大きな問題となることがある。したがって、我々法医学者は、損傷の受傷後経過時間を推定しなければならない。そこで、その損傷の治癒がどの程度進んでいるのかを形態学的手法を中心に検査するわけである。そのなかで、1993年に皮膚損傷治癒過程での種々の炎症性サイトカインの発現動態と受傷後経過時間の関係に取り組んだのが、現在の研究への第一歩で、現在では遺伝子改変動物や分子生物手法を駆使して、創傷治癒の研究に取り組んでいる。以下に、ここ数年の研究成果の一部、並びに今後の展望について簡単に紹介する。 代表的炎症性サイトカインであるTNF-aのreceptor type1(TNF-Rp55), IL-6のノックアウトマウス(KO)における皮膚の創傷治癒過程について検討したところ、いずれのKOマウスでもマクロファージ浸潤が、対照群と比較して減弱していたにもかかわらず、TNF-Rp55KOマウスでは、創傷治癒が促進しており、IL-6KOマウスでは、治癒が遅延していた。したがって、創傷治癒においてTNF-aは負の因子として、IL-6は正の因子であることが判明すると同時に、この両者のKOマウスに認められた治癒過程の違いは、TGF-βの発現が、対照群と比較して前者では増強しており、後者では減弱していたことによるものであった。従来創傷治癒においては、マクロファージ浸潤が必要不可欠であると考えられていたが、我々の研究において、マクロファージ浸潤よりもTGF-βの発現そのものが、創傷治癒の結果を左右することを明らかにした。 IFN-γKOマウスでは、IFN-γのシグナル伝達物質Stat1の活性化が減弱することにより、TGF-βの負のシグナル伝達物質Smad7の発現が抑制され、その結果としてのTGF-βの正のシグナル伝達物質Smad2/3の活性化が亢進し、治癒が促進していた。一方、IL-1 receptor antagonist (IL-1ra)のKOマウスでは、NF-kBが過剰に活性化されることにより、Smad7の発現が増強し、治癒が遅延した。このように、創傷治癒過程におけるTGF-β/Smadsシグナルと様々なサイトカインシグナルとのクロストークが、治癒を制御していることを明らかにした。 このように種々のノックアウトマウスを用いて、創傷治癒の分子メカニズムの解明に取り組んでおり、さらに、現在は皮膚の創傷治癒のみならず、肺や肝臓の創傷治癒についての研究をも進めている |
|
主な研究業績
|
|
研究室スタッフ
|
閉じる