東邦大学形成外科学教室における研究紹介

東邦大学形成外科教室
丸山 優

 東邦大学形成外科の歩みは昭和56年にさかのぼります。形成外科の手技やアプローチは人体全ての部位(臓器)に関連しており、取り扱う分野は多岐にわたり、これら全てが、創傷治癒と深く関わっていると言っても過言ではありません。教室創設以来『より良いQOLを目指す』を基本理念におき、診療、研究、教育に積極的に取り組んできました。創傷治癒に関する基礎的研究としては、教室の主軸である皮弁移植術を中心に、解剖学的検討やTissue expander法の導入、各種手技の確立、ケロイド・肥厚性瘢痕に対するintra cutaneous pressure techniqueの開発や薬剤併用効果、伸展皮膚の微細構築機構に対する基礎的研究などを行い、評価を得てきました。最近ではケロイド・肥厚性瘢痕におけるアポトーシス発現性、Matrix metalloproteinases(MMPs)、 Tissue inhibitor of metalloproteinases (TIMPs)発現性の解析などを行い、再生医学研究の1つとしては、従来の生骨移植に代わる新しい再建材料(血管柄付き人工骨)の開発研究を進めています。

・ケロイド・肥厚性瘢痕の研究
 近年、ケロイド・肥厚性瘢痕へのアポトーシス関与が着目され、その病態解明のため様々なアプローチがなされています。われわれも、ケロイド・肥厚性瘢痕発症メカニズムの解明のためアポトーシス発現性の解析や、耳垂ケロイドと他部位ケロイドとの組織学的比較検討、アポトーシス発現性の比較検討などを行ってきました。また、ケロイドの細胞外マトリックス過剰蓄積という特徴に着目し、MMPsや、そのインヒビターであるTIMPsの発現性についての検討を行い、ケロイド発症と増殖進展メカニズム解明を試みています(東邦大学病理学教室との共同研究)。いまだ不明点も多く臨床的にも確立された治療法がないのが現状でありますが、将来的にはこれら分子レベルでの詳細解明により、瘢痕組織の増殖拡大を人為的に制御する基礎的実験系の確立、さらにはその臨床応用が期待される分野でもあり、今後更なる検討を行っていく予定です。

・血管柄付き人工骨の開発研究
 臨床応用に即した血管柄付き人工骨の開発を目的に、細胞供給と血行導入源として血管柄付き骨膜弁を、細胞の足場として多孔連通構造を有したハイドロキシアパタイト(以下HA)を採用し、家兎を用いた実験モデルを作成し、HA気孔内における骨形成につき検討を行ってきました。HAに血管柄付骨膜弁を組み合わせた血管柄付人工自家骨は、boneless bone graftingの一法として臨床応用に即した有用な方法のひとつであると思われ、今後長期的な組織学的検討、新生骨の三次元的解析、強度の評価、骨新生に関する免疫組織学的・分子生物学的検討、遺伝子レベルでの解明、蛍光抗体法や、抗STRO-1抗体を用いた骨膜由来骨細胞の検出、証明などについての検討も念頭に開発を進める予定です。

 basicな研究のなかから形成外科の新しい治療法が生まれ、さらにそれらが成熟し著変する手技に昇華することも少なくありません。
 今日の医療技術の進歩・向上、またその情報公開、生活水準の向上、高齢化社会の到来など、QOL向上に立脚した診療科ともいえる形成外科は、まさに時代の要求に即した診療科であり今後のニーズはさらに高まるものと期待され、そのベースともなる創傷治癒に関する研究に今後も取り組んでいきたいと思います。

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