難治性消化管瘻孔に対するbFGF製剤局所投与法

群馬大学病態総合外科学
准教授 浅尾 高行
教 授 桑野 博行

繊維芽細胞増殖因子basic FGFは創傷治癒に重要な役割を果たしている。臨床においては、スプレー式のbasic FGF製剤、フィブラストスプレーが、皮膚潰瘍や褥瘡の治療促進を目的として広く用いられるようになっている。教室では、basic FGF製剤を調剤し難治性消化管瘻孔の保存的閉鎖に用いてその有効性を検討している。

【方法】ヒアルロン酸にフィブラストスプレーの溶解前の製剤を無菌的に混和しゼリー状のbasic FGFジェル製剤を調整した。
水溶性造影剤で瘻孔を造影したのちアトムチューブもしくは内視鏡の鉗子からERCP用のチューブを用いてbasic FGFジェルを瘻孔内に投与した。
【症例】62歳、女性。
【現病歴】
骨盤腹膜炎の診断で、膿瘍ドレナージ、単純子宮全摘出術、子宮付属器摘出術が施行されたが、術後第二病日よりドレーンより便の排出を認めたため、横行結腸人工肛門造設、開腹ドレナージ術を施行。その後、直腸腟瘻が形成されたため、経腟的腟断端閉鎖術が行われたが、挿入されたドレーン(図1)から便と尿が排出され、膀胱直腸瘻となった(図2)。保存的療法を行ったが難治性で閉鎖しないため、術後性難治性膀胱直腸瘻の診断にて紹介入院となった。慢性関節リウマチにてステロイドを常用しており、また数回にわたる手術既往もあり本人が手術に忌避的であることから十分なinformed consentのもと、basic FGF製剤の瘻孔内投与50μg/dayをおこなった。

結果】週一回の瘻孔造影にて経過を観察したところ、徐々に瘻孔の狭小化(投与後38日目 図3)及びドレーンからの便、尿の排液減少を認めた。投与開始から約2ヶ月半後、ドレーン抜去すると瘻孔の閉鎖が認められた。
【考察】皮膚の創傷治癒促進薬として用いられるbasic FGFは、皮膚潰瘍や褥瘡以外にも外科領域における応用範囲は広い。瘻孔に投与する際には、瘻管内の肉芽組織に薬剤が一定時間、接している必要がある。瘻管内の壊死物質や尿や消化液、細菌から健常な肉芽組織を保護することも早期閉鎖のための重要因子と思われる。抗癌剤や照射療法、ステロイドの使用など正常な組織修復の障害が想定される病態下においてはbasic FGFジェルが有用と思われる。

図1 横行結腸ストマと左下腹部のドレーン、尿と便の流出が認められた。

図2 治療開始時のドレーンからの瘻孔造影。直腸と膀胱が造影される。

図3 治療開始後38日目の瘻孔造影。瘻管の縮小化が見られた。ドレーンを少しずつ抜去したところ瘻孔の閉鎖が認められた。