| 第32回日本創傷治癒学会を顧みて |
| 会長 田井良明 (久留米大学形成外科・顎顔面外科) |
| 2002年12月5日、6日の2日間にわたり、福岡市のホテルニューオータニにおいて本学会を開催致しました。例年になく多くの演題と参加をいただき、盛会となりましたことを嬉しく思います。 本学会は色々な分野の方々で構成され、学際的な議論が自由に行えることに特徴があります。内容は基礎から臨床まで幅広い範囲を対象とし、それぞれの異なった視野で意見の交換ができ有意義な学会となりました。参加者全員が一堂に会し、討論しやすくするために、あえて一会場にしたことも良い結果につながったと思います。演題数は、特別講演2題、2つのパネルで10題、4つの主題で18題、一般演題49題、ランチョンセミナー2題、イブニングセミナー1題の合計82題でした。今回の企画としては、創傷治癒全体にわたる問題を取り上げましたが、特に再生医学とサイトカインの臨床応用に焦点をあてました。組織工学とサイトカインを用いる再生医学は、研究の段階から臨床へ著しい進歩を遂げ、企業化へ向けて産業界の注目を集めています。特別講演では、京都大学再生医学研究所の清水慶彦教授に「再生医療の現状と展望」についてお話を伺いました。清水教授は臨床(胸部外科)出身の研究者らしい発想で最先端の成果を明解に示されました。基礎、理工学、臨床の専門家で構成される研究体制が重要であること、生体内に目的とする臓器を形成するための足場(scaffold)と細胞を与えれば、生体が再生を可能とするということを実証されました。臨床医に大きなインパクトを与えて下さったことに感謝したいと思います。一方、サイトカインを用いる再生医療として、大阪市立大学大学院整形外科の高岡邦夫教授に「BMPの骨欠損修復への応用技術」について胸ときめくお話をいただきました。高岡教授の独創的アイディアで、すでに臨床治験において優れた結果がでており、整形外科領域のみならず骨粗鬆症の治療にもその応用が及ぶことは先端医療の進歩に大きく貢献されることでしょう。BMPが一日も早く製品化されることを期待したいと思います。サイトカイン製品の第一号として世界で注目された「FGF−2」(フィブラスト)について、科研製薬と共催でイブニングセミナーを開催しました。その血管新生誘導メカニズムについて、九州大学大学院病理学の米満吉和先生に重厚な研究成果を、さらにその臨床応用について埼玉医大形成外科の市岡滋助教授にお話をいただき、この製品のすばらしさと今後の可能性について認識を新たにしました。パネルディスカッションの一つは、ASOと難治性潰瘍の治療と現況について、外科と形成外科で先端的な討論を行い、有意義なものでした。外科からは従来の血行再建法と骨髄幹細胞の局所注射による新しい血管新生療法(久留米大外科、岡崎悌之先生)と高気圧酸素治療(日本医大第1外科、増田剛太郎先生)及び形成外科からはマイクロサージャリーを用いる皮弁移植と血管付加による血行改善(岡山大学大学院形成再建外科、光嶋勲教授)、及びFGF―2による血管新生の効果(東邦大学形成外科、荻野晶弘先生)を示され、患者さんのQOLの向上に著しい進歩が見られたことは大きな収穫でした。もう一つのパネルディスカッションは、増殖因子の臨床への展望と題して若手の研究者の情熱に満ちた発表と活発な議論が行われました。安全な臨床応用を目指し、新しい薬剤の開発につながることを期待したいと思います。ランチョンセミナーでは創傷のすみやかな治癒を目指した高気圧酸素治療(日本医大第1外科の徳永昭助教授、キッセイ薬品主催)とMoist Wound Healing Cocept & Applications of Wound Dressings (Flemming Wilhelmsen, M.D.,M.F.P.M.,コロプラスト(株)主催)は、創傷治癒に極めて有効であることを再認識させられました。主題、一般演題では、Scarless wound healing、消化管吻合の創治癒、Stoma形成とそのcare、ハイブリッド型の組織再生、肥厚性瘢痕、培養表皮、真皮の臨床治験、血管新生、遺伝子治療など、多種多様な多くの演題に熱心な討論が繰り広げられました。 本学会の構成は、外科、形成外科、病理、生理、内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、整形外科、救命、再生組織工学、看護科から成り立っており、会場を複数にすると、単に演題を消化するだけとなりやすく、この学会の持つ良さが発揮できなくなります。そのため今回初めて一つの会場でお互いの意見交換が行いやすい環境作りを致しました。この効果は十分にあらわれ、例年にない熱気にあふれた正に学際的学術集会になったことは喜ばしく、今後もこの形が続くことを望みます。また、企業からの積極的な参加も歓迎し、産学共同による先進医療の発展を期待したいと思います。 |