第30回日本創傷治癒学会 会長あいさつ
第30回日本創傷治癒学会を顧みて
会長 恩田昌彦
 第30回日本創傷治癒学会を2000年12月8日(金)、9日(土)、東京都千代田区平河町 砂防会館において、日本医科大学第一外科学教室でお世話させていただきました。本会は、皮膚のみならず諸臓器の損傷、修復過程の基礎的、臨床的研究の推進、発展を通じて社会に貢献することを目的として設立された創傷治癒研究会を母体として、本年より一層の発展およびグロ−バル化をめざし日本創傷治癒学会として発足しました。
 学会としてのスタートの年にあたり、20世紀の創傷治癒研究を総括し、来るべき21世紀の創傷治癒研究の方向性を展望したいと考え、招請講演として米国、カリフォルニア大学サンフランシスコ校からThomas K. Hunt先生を、ジョンスホプキンス大学からAdrian Barbul先生、さらに昭和大学より黒川高秀先生をお招きしました。Hunt先生はこれまでの創傷治癒研究を省みて、今後の方向性を指摘していただきました。Barbul先生はこれまで、あまり触れられることの無かった消化管吻合創治癒について、御自身の研究を中心に語っていただきました。黒川先生は長年にわたり、取り組まれている脚延長術の臨床経験をお話いただき、また創傷治癒との関係からも説いていただきました。
 学会化記念シンポジウムとして「21世紀の医療−再生医学」をとりあげました。「臓器再生・治療への挑戦」と題し、日本創傷治癒学会理事長の北島政樹先生ご司会のもと松本邦夫先生(大阪大学)、葛西眞一先生(旭川医科大学)、井上一知先生(京都大学)、福田恵一先生(慶應義塾大学)にそれぞれの分野における進歩と今後の展望について御講演いただきました。松本先生はHGFによる再生医学の実践と題しHGF投与または遺伝子治療による疾病治療の可能性についてご講演いただきました。葛西先生は移植肝の早期の肝再生を誘導し、早期に肝細胞の機能発現させる期待を語っていただきました。井上先生は糖尿病患者に対するラ氏島移植の可能性について御説明いただき、その臨床応用が極めて近いことが感じられました。福田先生は心臓内科医の立場からtissue engineeringを駆使して骨髄のES細胞からCMG(Cardiomyogenic)細胞の樹立に成功したことをご紹介いただき、心臓細胞の分化の方向性を明確に示していただきました。
 また、今回はフォーラムセッションを設け、テーマごとにすぐれた内容の発表を選ばせていただきました。事務局とも相談の上、それぞれの演者には公式機関誌Wound Repair and Regeneration(WRR)に論文としてご投稿いただくようお願いしましたところ、7人の先生方から御快諾いただいていています。5月のWound Healing Societyの年次総会で開かれるWRRの編集委員会の席上で、我が国からの投稿が届けられることを期待しています。
 さらに、今回は、これまであまり取り上げられることのなかった消化管の創傷治癒をサテライトシンポジウムとして坂本長逸先生(日本医科大学)にお願いして企画していただきました。消化管の創傷治癒研究は古くて、新しい領域と思われますので益々の発展を期待します。
 ご応募いただいた今回のご発表はいずれも大変な労作で、優秀なものでいずれも甲乙つけがたいものが多く、深く感銘を受けました。なにかと慌ただしい師走の時期でしたが、幸いにして多くの皆様のご参加をいただき、大変に実りある学会となりました。
 本年は東京女子医科大学形成外科 野崎幹弘教授のもとで、12月に、東京で開催されると伺っています。多くの演題が応募され、活発な議論が展開されることをお祈りしています。