2002 Joint Conference of the Wound Healing Society
and the European Tissue Repair Society参加記
札幌医科大学 医学部 皮膚科 小野一郎
No.3

 第2日の午後は前日と同様、一般演題としてinfection & inflamation, non-dermal repair, stam cells in repair, keratinocyte biologyのsessionが開催されました。この中で私は日本でもここ数年注目されている前にも述べましたstem cells in repairのtopicsを中心に聴きました。このsessionは大変に興味深い講演が多くあり、特にbone marrow 由来のstem cellがwound bedにfibroblastにかわって出現するというDr. S. R. Opalenicの発表(Bone Marrow-derived stem cells in wound healing)は大変に衝撃的で今後の創傷治癒研究、再生医療のあり方にも大きな影響を与えるのではないかと感じました。

会員懇親会の様子
The National Aqualium in Baltimoreで開催された会員懇親会の様子

 この日の夕方7時からは会員懇親会がThe National Aqualium in Baltimoreで開催されました。この水族館は全米でも3指に入るといわれる素晴らしいもので前述のインナーハーバーのピア3にあります。いかにもアメリカ的な大きな水槽にえいの群れが泳ぐ大変に広大でその水槽は一見の価値ありと思います。会員懇親会は閉館後のこの水族館を全館貸し切りにして進められました。多くの参加者がありましたが大きな会場であり一時は閑散とした感じもありましたが、party会場では多くの参加者が集いお互い親交を深めると共に色々な話題に(仕事ばかりでなく野球などについても)打ち解けたムードで夜遅く迄歓談していたのが印象的でした。なお、この日のお昼休みの時間にはWRR誌の委員会が開催され、日本からは塩谷先生、大谷先生と私が徳永先生の代理で参加させていただきました。その折に日本創傷治癒学会の現状についても大谷先生から報告がありました。WRRの講読者数も我が国は米国に次いで第2位であり投稿論文の数も増加傾向にありますので今後も日本の会員の協力が大変に重要であると改めてEditorのDr. Lindbladも強調されていました。この会の議事の詳細については次回の学術集会の総会でも大谷先生から御報告があると思います。

学会会場の雰囲気
学会会場の雰囲気。Dr. Fergusonの講演です。

 引き続く3日目は一般演題としてfibrosis & contraction, Burns, matrix biology, Bioengineeringの各sessionが開催されました。こちらのsessionでも米国、ヨーロッパの研究者に加え、日本や中国の研究者から大変に興味深い独自の研究成果が報告されていました。午後にはplenary sessionとして我が国でも大きな社会問題となりつつあるchronic woundに関しての講演がありました。すでにchronic woundの成因に関して多くの報告があるものの改めて患者数の多い欧米のこの方面における取り組みの真剣さに感銘を受けました。第3日目の終わりはpoint/counterpoint debateという私には全く初めての形式のsessionでした。これは一つの最新の論点(例えばgrowth factorの臨床応用の実現は創傷治療にインパクトを与えたか? Growth factors have made no impact on clinical wound healing)といったテーマでproとcon(賛否)の議論を代表1人ずつ発表し、さらにdebateをして会場の参加者が挙手で賛否を決定するというものでした。Dr. M. W. J. FergusonとDr. K. Cohenという大御所のお二人の先生の司会進行の下、冗談半分、論文を引用しながら相手の矛盾をつくなど半分は真面目で強烈な意見が飛び交うといった状況で、笑いも交錯する、私にとっては大変に印象深いsessionではありました。このsessionでは、ほかにもHBO does not contribute to clinical wound healing, Wound closure is the only valid end point for validating wound healing proceduresという論点が議論され、内容も議論の形式も大変に興味深く聞かせていただきました。また、この日の夕方にSecond World Union of Wound Healing Society Meetingの打ち合わせ会があり日本からは塩谷先生、大谷先生に加え、私も参加させていただきました。このmeetingは2004年6月8〜13日にフランスのパリで開催予定でWHS・ETRSも同年の学会をキャンセルして共催することとなったとの報告を受けました。日本創傷治癒学会としてこの学会に対してどのような対応をするかについても議論がありましたが、正式な対応に関しては理事長にご報告の上でなければ明言できない点、また国内の学会をキャンセルすることはないであろうという点と、もしWorld Unionとうたうのであれば日本を始めアジアの研究者のBoard memberに加えていただく方が自然であろうという旨の発言をいたしました。なお、参加者は3000人以上を予定しているということです。会期やその他の詳細は追って学会誌や学会でお知らせする事となると思います。また、2003年のWound healing Society Annual Meatingは2003年5月3〜8日にシアトルでDr. EhrlichとDr. Gibsonの主催で開催されます。一方、European Tissue Repair SocietyのAnnual Meatingは2003年9月にDr. Middelkoopの主催でオランダのアムステルダムで開催予定とのことです。

 最終日の午前中は欧米の若手研究者の研究成果のsessionがありました。恐らくは20歳代から30歳代前半の研究者が自分の研究成果をpresentationしていました。会場にも多くの指導的な立場の研究者が集い、聴衆でいっぱいの会場は一般演題の時とはひと味ちがった緊張した雰囲気の中、熱心な討論が進められました。我が国の学術集会でもこのような企画が実施されると若手の研究者の発表と研究者の交流の機会が増加するのではと感銘を受けながら講演を楽しませていただきました。なお、今回のpresentationはこのsessionを含め統べてcomputer presentationで進められましたが研究内容に加え、それぞれのpresentationにも工夫がされていて興味深く聴くことができました。ちなみに私が参加した会場で見る限りcomputer presentationのtroubleは皆無で今後はこのような発表形式が定着するものと改めて実感しました。
本学会の最後は英国のDr. FergusonによるFrom Lab to Clinic: Advances in the Prevention of Scarringsと題するscar-less wound healingに関する講演でした。既に我が国でも何度か講演を伺っておりましたので新たな感銘はあまりありませんでしたが、会場では瘢痕を抑制する治療を臨床に早く導入しようという意気込みに溢れたdiscussionがあり、数年前よりはさらに現実味をおびた講演になっていたと感じました。この講演を最後に4日間のWHS・ETRS合同会議はすべての予定を終え閉会されました。

次のページへ