第48回日本創傷治癒学会を開催するにあたって


第48回日本創傷治癒学会会長
帝京大学医学部教授
帝京大学医学部附属溝口病院 外科·緩和ケアセンター
宮澤 光男

 このたび、第48回の日本創傷治癒学会の会長を拝命し、2018年11月29日(木)・30日(金)の2日間、イイノホール&カンフアレンスセンター(東京、霞ヶ関)において学術集会を開催させていただくこととなりました。日本創傷治癒学会は1971年に発足した日本創傷治癒研究会を母体とし、2000年に日本創傷治癒学会となり、2018年の学術集会でその歩みは48年となる伝統のある学会です。歴史と伝統のある本学会を、日本創傷治癒学会の皆様のご支援を賜り開催させて頂くことは大変光栄なことであり、あらためて深く感謝申し上げます。

 私と本学会の関係は非常に古く、最初に本学会の前身である創傷治癒研究会にて発表したのは、1990年12月の徳島大学外科教授、古味信彦先生が開催された第20回創傷治癒研究会の時でした。医者になって4年目、慶應の関連病院から大学の外科学教室に帰室後、実質臓器の再生を研究したいと考え「肝臓班」に所属し、「肝切除後肝再生過程におけるc-myc遺伝子発現の組織内解析」というテーマで発表したのが最初です。肝臓はヒトの体の中で唯一、欠損後元の大きさに再生できる臓器であり、どのような刺激で再生するのか、なぜ再生はストップするのか等、非常に興味深く、毎日、昼夜を問わずラットの肝切除をしていたことが懐かしく思い出されます。その後、本学会とさらに関係が深くなる契機となったのは、1994年からのMassachusetts Institute of Technology (MIT) への留学です。MITには、「人工肝臓」の研究をしたいと考え留学したのですが、留学した教室のProf. Linda Griffithは「Tissue engineering」の概念を提唱したパイオニアの一人であり、当時、その研究室では「Tissue engineering で臓器を再生させる」という新しい分野の研究を世界に先駆けて行っておりました。斬新な分野の誕生に関われたことは、大変幸運なことであったと思っています。臨床の外科医であった私が、現在も「 Tissue engineering の技術を応用した様々な臓器の創傷治癒」の研究を継続できているのも、このMITでの経験があったからこそであり、この留学に際しご指導頂いた先生方には心から御礼申し上げます。

 本学術集会のテーマは「創傷治癒学と他分野とのフュージョン(Fusion of wound healing and other fields)」といたしました。創傷治癒学の進歩は、特に今世紀になってからは目を見張るものがあります。私の専門分野の消化器外科学においても鏡視下手術の適応拡大、ロボット手術の導入により、吻合部を糸と針を用いて外科医が手で縫う方法から、多くの吻合法が器械で行う方法に変化し、吻合部の創傷治癒も10〜20年前には考えられないような進歩を遂げております。そこで、今回、創傷治癒学と他の多くの分野がどのように融合し、創傷治癒学の進歩に関わり発展してきたかを総括し、近未来の「創傷治癒学」の方向性を築けるような議論ができたらと考えております。

 さらに、サブテーマとして「吻合部の創傷治癒」「瘢痕のない傷を目指して」を考えています。変化しつつある体表、腹腔内、胸腔内、頭頸部における傷、吻合部において、近年の創傷治癒はどのように変化しているかを、基礎的解析、創傷のケアも含め、医師、看護師、基礎系研究者の皆様と検討したいと考え、このテーマを選択いたしました。

 本学会は創傷治癒に関して、医師、看護師、基礎研究者、等の多数の分野の人々が一堂に会して、より良き創傷治癒の方向性を議論可能な唯一の学会です。全ての創傷治癒に関わっている分野の皆様が、積極的に活発なご発表、ご討議をして頂けるよう様々な工夫を凝らして参ります。多数の演題を応募していただき、活発な討論ができますよう、多くの分野の多数の皆様の参加をお待ちしております。

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