30th Annual Meeting of Wound Healing Society(シャーロット)に参加して

順天堂大学医学部形成外科学講座
田中 里佳

 2018年4月25日から29日までの間、アメリカノースカロライナ州シャーロット市にてアメリカ創傷治癒学会学術集会(WHS)が開催されました。今回の大会長はBrigham & Women’s Hospital and Harvard Medical School の Elof Eriksson先生が務められ、最先端の創傷治癒研究を中心に創傷治癒に関係する基礎研究者、臨床医、医療従事者が交流を深めつつ、多くの情報と意見の交換ができる大会になることを望まれて開催され、盛大な会となりました。

 WHSの初日の最初のセッションは毎年、Wound Healing Foundation (WHF) が主催するHunt Lectureから始まります。Hunt Lectureは2013年より、WHFが創傷治癒研究とその発展に多大な貢献をされたThomasK. Hunt先生に敬意を表し講演会が開催されるようになりました。毎年WHFメンバーが世界的に著名な創傷治癒研究者の中から協議を重ね選出された方が講演されます。今年は、Laboratory of Mammalian Cell Biology and Development Investigator, Howard Hughes Medical Institute Rockefeller UniversityのElaine Fuchs, PhD先生が「Coping with Stress: Stem cells in injury, cancer and inflammation」について素晴らしい講演をされました。皮膚の幹細胞は外傷などによる損傷に対して迅速に反応し組織再生を促さなければなりません。Elaine Fuchs先生は、表皮幹細胞がどのように quiescent な状態から組織再生状態に移行するのかを研究されています。今回は、genetic and genomicアプローチにて表皮幹細胞の分子レベルにおける皮膚再生、発毛、炎症、癌化の関与について最新の研究成果を発表され大変興味深かったです。Hunt Lectureで、ノーベル賞候補者とも呼べる研究者の話を聞けることで、多くの研究者が刺激を受け、さらなる創傷治癒研究に取り組み活躍することを期待し、WHFは本会の開催のため資金調達などを含めて尽力しています。WHF はその他に数々のグラントを提供し、WHSでは受賞者が研究発表を行った後に授賞式を実施しています。WHF3M Awardが最も大きな賞であり、3M社が受賞者に年間$15,000を助成しています。WHF活動のための寄付金調達も一つのミッションとなっており、私はWHFのメンバーとして苦労もありますが、WHSの発表でWHF助成金により素晴らしい研究が発展していることを知るとWHFの活動の意義と重要性を再認識できます。

 最後に、アメリカノースカロライナ州シャーロット市は、州最大の都市であります。会場はダウンタウンの中心にあるConvention Centerで開催され、市内には美術館や博物館などがあり、アメリカ最大のモータースポーツ総括団体であるNASCARの聖地として知られ、NASCAR 聖堂があるようです。今回は観光をする時間がなかったので次回の楽しみに取っておくこととしました。

WHFメンバー

左からWHFメンバー:
Manuela MartinsGreen先生、赤坂喜清先生、WHF会長 Laura Parnell先生、著者、岡根谷哲哉先生

 

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