22nd International Workshop of the International Society for the Study of Vascular Anomalies (ISSVA) in Amsterdamに参加して
—日本創傷治癒学会入会のごあいさつにあわせて—

信州大学医学部形成再建外科学教室
杠(ゆずりは)俊介

 この度、日本創傷治癒学会に入会させていただきました。主に、口唇口蓋裂、血管腫血管奇形と熱傷を専門としてきました。どれもきずあとをきれいに治さなければいけないということでは、創傷治癒に関する知識と技術が必須です。私の本学会(研究会)デビューは平成4年冬の横浜であったと記憶しております。その後、本学会への足が遠くなってしまい、長年の我が身の不勉強を見直し、自分の再教育として入会させていただきました。しっかり勉強させていただきます。

 新入会員でありながら創傷治癒のニューズレターを書かせていただくのはおこがましいことと思いますので、目線を変えて血管腫血管奇形についてお知らせをさせていただきます。創傷治癒と血管腫血管奇形は一見全く異なる分野のようですが、どちらも血管新生という現象が根底にあるという点ではつながるのではないかと思います。一方は治癒のためにそれを促進しなければなりませんが、他方はそれが過剰異常増殖になっているので抑制しなければならず、血管新生を制御することが共に重要なテーマとなります。

 22nd International Workshop of the International Society for the Study of Vascular Anomalies (ISSVA)は、2018年5月29日から6月1日までの4日間、オランダのアムステルダムで開催されました。このISSVAは1976年にChildren’s Hospital BostonのカフェテリアにてJohn Mulliken先生とAnthony Young先生を中心とした数名の会合から始まったといわれています。Vascular Anomaliesを腫瘍(血管腫)と奇形(血管奇形)に分けるISSVA分類は、形成外科医のMulliken先生と病理学者のGlowacki先生がPlastic and Reconstructive Surgery誌上で1982年に発表した論文をもとに作成され、2年に1回のworkshopのたびに改訂されてきました。今年のworkshopには748名が出席し、112の口頭演題発表がありました。血管腫に関しては、2008年ボストンでのworkshopで発表されたプロプラノロールに代表されるβブロッカーによる治療が7演題ありましたが、すでに世界的な標準になったという印象でした。血管奇形に関して躍進が著しかったのは、様々な脈管奇形組織で起きている遺伝子異常の検索とそれに対する分子標的治療に関するものが33演題と最多であったことです。今のところ、mTOR阻害剤であるシロリムス(ラパマイシン)が先行していますが、BYL719(Venot, Nature 2018 )MEK阻害剤やBRAF阻害剤など抗がん剤に属する分子標的薬が今後続々とこの分野の疾患に応用されていくことが予測されます。その中で、ROBERT SCHOBINGER AWARD FOR BEST CLINICAL PAPERを、加藤基先生(埼玉小児医療センター形成外科)がLymphatic malformations treated by venous anastomosis technique based on flow assessmentの演題で受賞され、私たち日本でこの疾患に取り組んでいる仲間は大変勇気づけられました。次回のISSVA workshopは2020年5月12〜15日でバンクーバーにて行われます。

 というわけで、血管新生を制御する目で創傷治癒についての診療と研究にあたりたいと思います。まずは、教室員の趣味で、驚異的な再生能力を持つイモリを実験室で飼育し始めました。

 

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