乳酸菌を用いた革新的創傷被覆材開発を目指して

東北大学大学院医学系研究科 形成外科学分野
伊師 森葉

 この度、第53 回日本創傷治癒学会での研究奨励賞の受賞を賜り、大変光栄であるとともに身の引き締まる思いです。これまでご指導くださいました今井啓道教授をはじめ、多くの先生方に心より感謝申し上げます。

 私の所属する東北大学形成外科では、館正弘名誉教授が取り組んでおられました創傷と免疫に関する研究を代々続けております。私は大学院入学とともに研究を開始し、研究協力分野である看護技術開発学分野の菅野恵美教授、丹野寛大講師の指導のもと、乳酸菌を用いた研究に取り組みました。乳酸菌はわれわれの生活に身近に存在しており、発酵食品から整腸剤といった薬剤まで幅広く応用されています。本研究では、生きた乳酸菌を用いることによる課題を克服するため、加熱死菌乳酸菌L.plantarum KB131を使用しました。本研究では、L. plantarum KB131を創部へ直接投与することで①急性創傷の治癒を促進する、②M1・M2マクロファージ双方の分化を誘導する、③C 型レクチン受容体の下流のアダプタータンパク質であるCARD9 を介した反応によって創傷治癒を促進する、といったことが明らかとなりました。今後、感染創や難治性創傷への効果を検証するとともに、製品化に向けた様々な課題をクリアし、感染創にも適応可能な新たな創傷被覆材の開発を目指していきたいと思います。

 今後も形成外科医として最も患者様に近い立場から基礎研究に携わり、創傷と免疫をテーマに研究を続けるとともに、臨床応用につながるような研究体制を継続していきたいと思います。創傷治癒学会は、創傷治癒に関わる様々な分野の専門の先生方からご意見を伺える貴重な場と考えおります。今後もご指導・ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

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