局所低周波振動刺激による糖代謝と血管拡張/
新生を介した糖尿病ラット全層欠損創治癒促進効果の検証
東京大学大学院医学系研究科
老年看護学/創傷看護学分野
幅 大二郎
この度は、第52回日本創傷治癒学会にて研究奨励賞という大変名誉ある賞を賜り、身に余る光栄に存じます。これもひとえに、振動シーズの開発者である真田弘美名誉教授、仲上豪二朗教授をはじめとする皆様のご指導ご鞭撻によるものであり、この場を借りて御礼申し上げます。また大会長の須釡淳子教授、選考委員会の先生方、事務局の先生方に深く感謝申し上げます。
受賞いただいた研究は、糖尿病足潰瘍の治癒促進のため、創部での糖代謝と血流を改善し、個々の糖代謝機能と血管拡張能に応じて振動強度を自律的に最適化するインテリジェントバイブレーションドレッシング材開発の基盤となっています(特願2022-107292)。これまで局所低周波振動刺激による皮膚血流促進効果(Nakagami et al., 2007)や褥瘡の治癒促進効果(Arashi et al., 2010)について公表されてきましたが、褥瘡以外の創傷における効果は不明でした。本研究は、高血糖ラットモデルにおいて局所低周波振動刺激によるAMPK活性化を介した非インスリン依存性糖取り込み促進効果(Haba et al., 2021)と、高血糖ラットモデルにおける創傷治癒促進効果を示した初めての報告となり、最適な振動設定により局所糖代謝を改善することで糖尿病性創傷の治癒を促進する新しい治療戦略を提示しました。この研究プロセスは看護理工学におけるリバーストランスレーショナルリサーチの手法に基づいており、将来的には低周波振動刺激を用いた新しいセルフケアデバイス機器を開発し、社会実装を目指しております。
引き続き、創傷治癒を基盤とした更なる研究の発展ができるよう邁進して参ります。今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。この度は誠にありがとうございました。