第53回日本創傷治癒学会の開催にあたって
順天堂大学医学部形成外科学講座主任教授
第53回日本創傷治癒学会 会長
水野 博司
この度、第53回日本創傷治癒学会を主催させていただきます、順天堂大学医学部形成外科学講座の水野博司です。本学会は1971(昭和46)年の研究会発足より始まり、創傷治癒に関して世界でも長い歴史と伝統を有する学会であり、このような会を主催させていただく光栄と責任の重さを感じております。
今回の学会のテーマですが、『原点回帰、そして今、ふたたび「創傷治癒」』といたしました。私が本学会に入会したのは2004年ですが、私の専門領域である形成外科においても糖尿病性足壊疽に代表される慢性創傷患者が急増しており、その当時は単純な足趾断端形成を行ってもなぜ縫った傷がつかないのかジレンマを抱いておりました。その後もはや誰もが知っているSPPという概念により解消されるわけですが、こうしてみますと創傷治癒という学問は、病態生理学的・分子生物学的な発展、Scarless Wound Healing、機能的創傷被覆材や陰圧創傷治療システムなどの医療機器の開発と応用、細胞治療学や再生医学の登場、そして病診連携・訪問診療などの社会インフラの整備によって急速に進歩してきた感があります。この流れはこれからも進んでいくでしょうが、今ここで振り返ってみて、私たちは何のためにこの領域に身を置くのか、それはやはり患者さんの為だと思うのです。外科医にとってはいくら手術がうまくいっても最後の最後で傷が治らなければ治療が完了したとは言えません。また現代は多様なライフスタイルが尊重される時代です。人々は自分のかかった病と上手に付き合いながら、時には病院で、また時には自宅や介護施設などで、医師のみならず看護師や多くのコメディカルの方たちに手を差し伸べられながら共に納得のいく過ごし方を選択できる時代であります。私たち創傷治癒のスペシャリストも多様化した働き方を求められる時代であることを意識して取り組んでいく必要があり、本学会の様な多職種の専門家が一同に会する集学的学会ならではのプログラムを数多く準備させていただきました。更に今回の特別講演として2名の先生(国内・海外)をお呼びしましたので楽しいお話が拝聴できることを楽しみにしていただければと存じます。
2019年末に発生し全世界が脅威にさらされた新型コロナウイルス感染症の影響を受け、2020年、2021年の学会は完全Web開催となりましたが、昨年2022年の第52回大会では須釡淳子会長のもと、久し振りに現地開催されました。コロナ禍がもたらした新しい生活様式(New Normal)においてデジタル技術のもたらした恩恵は、学会場に行かなくとも最新の情報取集が可能となったこともその1つですが、一方で私も含め昨年現地参加された皆様はface-to-faceの場というものが人々にとってwebには代えがたいものであることも一層感じられたことかと思います。そこで今回の会場地ですが、日本の代表的なリゾート地の1つである軽井沢において現地開催させていただくことにいたしました。私たちは足掛け4年、新型コロナウイルス感染症のために様々な日常生活の制約を受けてきました。勿論医療従事者としても多くのリスクに対峙してきたわけですが、ようやくここにきてほぼ終焉も見えてきたところですので、ご参加の皆様にとりまして少しでも日常から解き放たれた自然の中でくつろぎながら心身ともにリセットして楽しく過ごしていただくための趣向も凝らしつつ、実りある学会になるよう最後まで準備を進めて参りたく存じます。
紅葉で彩られた秋の軽井沢にて多くの皆様の御参加を心よりお待ちしております。
第53回日本創傷治癒学会のお知らせ
会 期 : 2023年11月21日(火)・ 22日(水)
会 長 : 水野 博司(順天堂大学医学部 形成外科学講座 教授)
会 場 : 軽井沢プリンスホテル ウエスト(〒389-0193 長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢1016-87)
テーマ : 原点回帰、そして今、ふたたび「創傷治癒」
大会HP : http://jswh53.umin.jp/