韓国創傷治癒学会The Wound Meeting 2024 Seoulの参加報告
石川県立看護大学大学院看護学研究科
共同研究講座ウェルビーイング看護学
幅 大二郎
2024 年3 月22 日-23 日に韓国ソウルにてThe Wound Meeting 2024 Seoul が開催されました。日本創傷治癒学会は国際交流事業の一環として韓国創傷治癒学会(Korean Wound Management Society: KWMS)との提携のための基本合意書(MOU)を取り交わすことになり、この度学術集会でのMOUセッション演者として慶應義塾大学医学部形成外科学教室の髙谷健人先生とともに参加させていただきました。今回演者として貴重な機会をいただきましたこと、日本創傷治癒学会事務局ならびに理事長の吉田昌先生に深く感謝申し上げます。
学会1日目にMOU セッションが行われ、セッションテーマは〟New Concept of Acceleration a nd Regeneration of Wounds: Japanese BrandNew Science〟でした。そこでは第52 回日本創傷治癒学会で研究奨励賞をいただいた研究内容を踏まえた、新しいセルフケアデバイス「インテリジェントバイブレーションドレッシング材」(国際特許出願PCT/JP2023/024188)の開発について発表させていただきました。本邦は超少子高齢社会に突入し、在院日数の短縮や地域包括ケアシステムが推進され、難治性創傷は在宅での創傷管理が基本となり,在宅において適切なセルフケアが求められています。これまで我々のグループ(東京大学大学院医学系研究科老年看護学/ 創傷看護学分野)では、創傷被覆材による創の管理、バイオフィルムに基づく創傷治療などの看護ケアと併せて、物理療法の一種である低周波振動刺激に着目してきました。そして局所低周波振動刺激による皮膚血流促進メカニズムを解明し(Nakagami et al., 2007; Ichioka et al., 2011)、産学連携による振動器開発を進め、臨床研究において褥瘡の治癒促進効果を報告してきました(Arashi M et al. 2010)。さらに高血糖ラットモデルにおいて局所低周波振動刺激によるAMPK 活性化を介した非インスリン依存性糖取り込み促進効果と、炎症の改善、血管拡張と新生に伴う血流増加と創傷治癒促進効果を報告し(Haba et al., 2021; 2023;Syabariyah S, et al. 2023)、局所糖代謝を改善することで糖尿病性創傷の治癒を促進する新しい治療戦略を提示しました。これまでの研究をもとに、日常生活の中で継続して適応可能なドレッシング材タイプのセルフケアデバイスが有効と考え、振動のウェアラブル化を目指し、ウェアラブルバイブレーションドレッシング材を開発しました。そして高血糖ラットモデルにおいて創傷治癒促進効果を報告し、新しいセルフケアデバイスの可能性を見出しました(Haba et al.,2023)。
MOU セッション終了後、またMOU 締結セレモニーにも参加させていただきましたが、KWMS の先生方やセッションを聴いてくださった先生方に興味を持っていただき、高い評価をいただきました。韓国も超高齢社会へと突入していく中で、日本での在宅における創傷管理や低周波振動を用いた創傷治癒とセルフケアには関心があるようでした。この度はセッションテーマに恥じない、看護理工学において考えられる最先端のリバーストランスレーショナルリサーチのモデルケースを紹介させていただきました。本研究の振動シーズの開発者である石川県立看護大学学長の真田弘美先生はじめ東京大学仲上豪二朗先生、ご指導くださった先生方に深く感謝申し上げます。引き続き、創傷治癒を基盤とした更なる研究の発展ができるよう、そしてKWMSとの学際的な連携を深めていけるように、研究に邁進して参ります。今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。この度は誠にありがとうございました。
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▲ 筆者の口演 | ▲ 髙谷健人先生の口演 | |||
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▲ MOU合意文書の署名と交換:右はKWMS理事長のYoung Joon Jun教授 | ||||
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▲ 会場にての集合写真 |