第55回日本創傷治癒学会を開催するにあたって
第55回日本創傷治癒学会会長
兵庫医科大学形成外科
西本 聡
このたび、創傷治癒学会を、2025年12月に開催させていただく運びとなりました。会場は交通の便が良く、師走の街の華やかさを味わっていただけるよう大阪の地とさせていただきます。多くの皆様をお迎えし、対面で語り合える場を設けられますことを、心より嬉しく思っております。
今回の学会のテーマは、「きずと『つきあう』」としました。
『つきあい方』には様々な考え方があると思います。私たちはふだん、「きずを治す」ことを目指して努力しています。しかしまた、すべての傷が完全に癒えるとは限りません。中には無理に「治す」だけを追いかけるのではなく、長くつきあっていかなければならない傷もあります。少し時間軸を延ばした『つきあい方』についても考えてゆきたいと思います。
近年、様々なデバイスや創傷被覆材など新しいものが投入されてきています。その使い方や効果などについて語り合うことはとても重要と考えます。
教科書的には手術創などは瘢痕の介在なしに一次治癒することになってはいますが、ヒトの場合、瘢痕の介在なく創傷が治癒することは実現されていません。また、医療者の手を離れた「きず」は患者さんの体にはずっと存在し続けます。医療者側は手術後の「きず」をできるだけ目立たないようにしようという取り組みが必要と考えます。
また、我々の「きず」への視点は客観的になりがちで、またそうあるべきであろうと考えますが、「きず」を持った患者さんにとっては主観的なものです。消えない「きず」と「つきあう」ことには精神的なサポートも必要でしょう。
昨今は高齢化が進んでいます。わが国の流れとして、高齢者は施設よりも在宅で過ごしてもらおうとしています。様々な制限のある在宅の場においても、あるいは在宅であるからこそ褥瘡をはじめとする創傷の管理は必要です。経済的サポートは薄いにもかかわらず、在宅でのニーズは拡大するのではないでしょうか。
シンポジウム・パネルディスカッションのテーマは評議員の方々にアンケートをとり、アイデアを頂きました。せっかくご意見を頂きましたのに採用できなかった方にはこの場を借りてお詫び申し上げます。
「きず」との『つきあい方』には正解もゴールも見えません。だからこそ、丁寧に向き合っていく仲間の存在が、とても心強く感じられるのだと思います。本学会が、専門や職種を越えた「仲間」に出会える場になることを願っています。
5月に演題募集を開始します。大阪の会場で、皆さまにお会いできるのを楽しみにしております。