日本創傷治癒学会研究奨励賞を受賞して

札幌医科大学医学部 形成外科学講座
上田 直弘

 この度は研究奨励賞という栄誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。札幌医科大学形成外科では、北海道大学大学院保健科学研究院の千見寺貴子教授、ならびに札幌医科大学大学院保健医療学研究科の齋藤悠城教授のご協力の下、創傷治癒における細胞老化の研究を行っております。

 細胞老化は、ストレス刺激により細胞周期を停止した細胞が、SASP(細胞老化随伴分泌現象)を介して炎症因子などを放出する現象です。〝老化〟は負のイメージが強いですが、正常な創傷治癒には不可欠な一方、糖尿病性潰瘍などの慢性創傷では治癒を遅らせるという、生理的作用と病態への関与という二面性を持つ点において非常に興味深い現象です。

 本研究では、ケロイド病態における老化細胞の悪影響を明らかにしました。ケロイド線維芽細胞内の老化細胞と増殖細胞が互いを活性化する悪循環を形成しており、特に難治例ほど老化細胞が蓄積していることを見出しました。さらに、in silico 創薬技術により、この両方の細胞を標的とする候補薬としてアナグレリドを同定し、その有効性を検証しました。

 既存治療で難渋する症例に対し、本剤が新たな選択肢となるよう、臨床応用を目指して研究に邁進していきたいと思います。

 


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